異世界でも職業:ヘルパーです。~利用者様は元・伝説のパーティー!?~⑤

消えたフェイスシート

おかしい。そんなことがあるのだろうか。

「檀野さんのフェイスシートがない?」

事務所でもつぶやいた言葉を車の中でもつぶやいてしまった。いくら探してもフェイスシートをはじめ、檀野さん関係の書類一式見つからなかった。書庫の前を右往左往している間に時間が迫り、情報を得られないまま仕方なく檀野さん宅へ向かっている。住所だけでも覚えていたのが幸いだ。

住所を覚えていたのは、たしか、先日までフェイスシートがあったからだ。それを僕は一度目を通している。

「だけど、住所以外覚えていない……」

おかしい。本来なら利用者のフルネーム、性別、年齢、家族構成およびキーパーソン、既往歴、介護サービスを利用するに至るまでの経緯ぐらいは頭に入っているのに……まるで消されたかのように記憶に残っていない。こんな感覚初めてだ。

この時点ですでに僕は招かれざる客なのかもしれない。

不安に駆られているうちに、やたらと目立つ一軒家が見えた。

「ここかな……なんか、昔の洋画に出てきそう」

年季の入ったレンガ造りの家に「檀野」と板で簡単に作ったような表札があった。

ここか……。

車を停め、玄関に立つ。そして、呼び鈴を押そうと探したが、

「ないか……」

一面褐色のレンガの外壁を見回しても装置らしき物はなかった。それならば、

「こんにちは!訪問介護『なつめ』です!」

玄関のドアをノックしてみた。乾いた音が響く。これまた古めかしくも頑丈そうな木のドアだ。

「……はい」

少し間をおいて、女性の声が返ってきた。

「檀野さんの入浴介助で参りました。升子と申します」

僕はドア越しに話した。果たして受け入れてもらえるのか。

「……どうぞ、お入りください」

また少しの間の後、声が答えた。よかった、まずは家に入れる。

「はい、失礼します」

ドアを開け、一歩進んだ。すると、そこに、

「お待ちしておりました」

若い女性が立っていた。きっと家族の方だろう。

「ご家族様ですよね?入浴をなさるのは……」

「案内します。どうぞ、お上がりください」

「あ、はい、では、お邪魔します」

僕は靴を脱いで、女性に導かれるように中へ入った。

 

 

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