異世界でも職業:ヘルパーです。~利用者様は元・伝説のパーティー!?~④

上手くいかない人たち

訪問介護ステーション「なつめ」の事務所のドアに手をかけると向こうで話し合う声が聞こえた。

「昨日、佐藤さんのサービスに入ったら『この前来たヘルパーのほうがよかった』って言われたんだけど、五十嵐さん、あなた何したの?余計なサービスしたんじゃないでしょうね」

この強めの話し方は自称ベテランの大平さんだ。朝から騒がしいこと。

「え!私は何も……普通に調理しただけですが」

大平さんの矛先は、僕よりは年上だが職場内では若い部類にあり、大人しい五十嵐さんに向けられているようだ。

「気に入ってもらおうとはりきっていっぱい作ったとか味付け濃くしたとか心当たりない?それか、時間余ったからって調理の他に掃除とかしてない?」

「掃除とかしてないですよ。品数も味付けも手順書通りにしてますし。あ、作り終わった後で、佐藤さんの奥さんがアルバムを持ってきたので、それを見てちょっと話が盛り上がっちゃいましたけど……」

「それよ!それ!それが過剰なサービスなの!調理以外のサービスをしちゃダメ!会話や傾聴も時間がかかればその分も料金かかるんだからね!」

「そんな、お話ぐらいは……」

「おはようございます」

僕はタイミングを見計らってドアを開けた。わざと話の腰を折るように。

「おはようまっすぅ。ねえ、聞いて!」

挨拶するやいなや大平さんは僕に飛びつきそうな勢いで近づいた。

「どうしたんですか?」

「五十嵐さんったら調理そっちのけで佐藤さんと話に夢中になっていたらしいわよ。佐藤さんの奥さんがアルバムを持ってきたからだって言い訳しているけど、そこはきっぱりと断って欲しいよね。あるいは別料金になりますって説明しないと。だから、私、注意したからね。まっすぅも気をつけてね」

「……はぁ」

歪曲した主張に驚いて反応が遅れてしまった。

「五十嵐さん、ヘルパーはボランティアじゃないの。わかった?」

「……はい」

五十嵐さんはうつむいてか細く返事をする。大平さんの理不尽な注意をむりやり呑み込んで我慢しているように見えた。

「そういえば、まっすぅは初めて檀野(だんの)さん宅で入浴に行くんでしょ?なんか、あそこの家の人って気難しいみたいで……まっすぅを受け入れてくれるといいんだけど」

「そうなんですか?大丈夫かな……」

心配だ。その檀野さんというのが、今まで何度か大平さんを含め他のヘルパーが訪問しているのだが、サービスできずに帰されるらしい。他の事業所の利用も考え始めつつ、「なつめ」での最後の砦として僕に白羽の矢が立ったと聞いている。

「まぁ、まっすぅでもダメなら仕方ないね。とりあえず、行ってきて」

「は、はいっ……」

大平さんが僕の肩を叩いた。本人にしたらポンと軽く叩いたつもりかもしれないが、肉厚で大きな手を振り下ろすもんだから結構痛い。

「升子さん、お気をつけて」

うつむいた頭を少し上げた五十嵐さんが上目で窺う。

「五十嵐さん、ありがとうございます。大平さん、今一度情報見てから行ってきます」

僕は檀野さんのフェイスシート(プロフィール)を確認するために事務所の書庫を開いた。

 

↓Twitterやってます。無言フォローOKです!

↓ランキング参加中です。ポチっと押してくださると喜びます!