異世界でも職業:ヘルパーです。~利用者様は元・伝説のパーティー!?~②

介護男子の憂鬱

女の子がいなくなった合コンで四人分の料理を男二人が消化するのはむなしいものがある。

「伊藤、今更だけどごめん」

僕は自己紹介で口を滑らせたことを詫びた。ヘルパーという職業がそんなに女の子に不評だと思わなかったのだ。

「升子、仕事楽しいか?」

伊藤がビールの泡をすすりながら、いきなり訊いてきた。

「え?……うーん……」

即答できず、歯切れの悪さが答えになってしまった。たしかに、他人から楽しいかと訊かれると、

「それより、悩みが多くて楽しいと感じる余裕がないかな……」

「悩み?」

「勤めてそろそろ半年だけど、利用者のことから職場の人間関係までいろいろ。給料もまだ基本給の一番低い額だし、ボーナスもまだ。ときどき挫けそうになるよ」

「俺も似たようなもんだ。ただ、訪問介護員(ヘルパー)にはまた施設の職員と違った大変さがあるだろうな。利用者と一対一になる時間も長いだろうし。しかも、身体的な介助だけでなく、調理するとか洗濯掃除とかの……そういうの何だっけ?」

「生活援助」

「そう、それそれ。それが俺には難しいな。だから、升子を尊敬するよ。家事出来る男はきっとモテるぜ。なんなら俺がもらいたいぐら……」

「嫌です」

「そこ即答か」

伊藤の彼女になる人は苦労するかもしれない。そんな僕も家事は仕事だからできるのであって、普段は結構ダラダラしている。

「……介護って何だろう」

ふと、頭の片隅でいつも揺れていた自答が僕の口からこぼれ落ちた。

「なんだよ、急に」

伊藤がトンとグラスを置く。

「それが一番の悩み」

「深い悩みだな。俺はまだそこまで考えたことない」

「忙しいから?」

「そうだな。だが、それ以上に……正解がない。しかも、報われないことも多々ある。升子が考えているようなことは常に悩みながらみんな働いていると思うよ。俺のいる施設は利用者に対して職員が少ないからどうしても行き届かない部分も出てくる。そんな環境で『理想の介護』なんて考えている場合じゃないんだよね。正直」

「そうか……」

僕の悩みは間違っているのだろうか。

限られた時間の中で、少しでも「生きていてよかった」と思えるような、そんな介護を僕は目指している。

しかし、伊藤の冷めた目と氷水で薄まったカシスソーダが苦くて、僕は酔えなかった。

 

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